ベステラは反発の動き、24年1月期大幅増収・黒字予想

2023年3月16日 10:31

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 ベステラ<1433>(東証プライム)は鋼構造プラント設備解体工事を展開し、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。23年1月期は、前期比では受注・着工を予定していた大型解体工事の計画延長や役員退職慰労金引当の計上などで減収・赤字だったが、前回予想比では一部工事の追加受注などが寄与して前回予想を上回って着地した。24年1月期については堅調な受注見込案件の状況を踏まえて大幅増収・黒字予想としている。老朽化プラント解体工事の増加などで中期的に事業環境は良好であり、収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化の影響で22年10月の昨年来安値に接近する場面があったが、目先的な売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■鋼構造プラント設備解体のオンリーワン企業

 製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。製鉄・電力・ガス・石油・石油化学業界(製鉄所・発電所・石油精製・石油化学設備など)向けを主力とするプラント解体工事、および特定化学物質・アスベスト・ダイオキシン・土壌汚染などの環境関連対策工事を展開し、主要顧客はJFEグループ、日本製鉄グループ、東京エネシス、IHIグループなどとなっている。

 20年2月には、インターアクション<7725>から3Dスキャン・3Dモデリング事業およびプラント設計事業を譲り受け、新会社3Dビジュアルとして事業を開始した。21年12月には、アスベスト対策やダイオキシン対策など環境汚染対策工事に関して特殊な工事技術を保有する矢澤(東京都渋谷区)を子会社化した。

 なお20年9月にリバーホールディングスを持分法適用関連会社化したが、リバーホールディングスがタケエイと21年10月1日付で共同持株会社TREホールディングス<9247>を設立して経営統合したため、リバーホールディングスは持分法適用関連会社から除外された。業務提携関係は継続するとしている。

 23年1月期のプラント解体事業の完成工事高は8.6%減の52億42百万円、業界別構成比は電力が14%、製鉄が27%、石油・石化が27%、環境が15%、ガスが5%、3Dが2%、その他が10%だった。構成比は大型案件によって変動するが、環境関連の工事需要の高まりや矢澤のグループ化で環境分野の構成比が上昇傾向となっている。また顧客の設備投資計画に応じた季節性があり、下期に完成工事高が増加する傾向が強い。なお完成工事高のうち元請工事は13億14百万円で元請比率は25.1%(同19億68百万円で34.3%)だった。

 23年1月期の受注高は46.3%増の70億円、23年1月期末時点の受注残高は33億52百万円となった。受注残高の業界別構成比は電力9%、製鉄10%、石油・石化74%、環境5%、ガス1%、その他1%となっている。受注残高ベースでは大型案件の影響で石油・石化の構成比が高くなっている。

■優良な顧客基盤や特許工法・知的財産の保有が強み

 大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的な解体マネジメント、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。技術関連では、球形ガスホルダー解体「リンゴ皮むき工法」や火力発電所等の「ボイラ解体方法」の特許を取得し、遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」も開発している。さらに風力発電設備解体需要に応えるため、他社に先駆けて「マトリョーシカ式工法」「タワークレーン工法」「転倒工法」の特許工法を開発している。

 22年7月には日立パワーソリューションズと国内陸上風力発電設備の解体工事において、ベステラが保有する「発電用風車設備解体に関する特許技術(転倒工法)の実施許諾契約を締結した。風力発電設備解体工事業における協力体制を強化する。

 22年9月には、民間住宅解体分野において全国約1600社の専門工事会社と施主をマッチングするサービス「クラッソーネ」を運営するクラッソーネと資本業務提携(12.5%出資)した。

 22年10月には、クレーン測定ロボットの開発完了と、当ロボットを用いたシステムによるクレーンレール測定サービスの提供開始を発表した。クレーン検査方法のデジタル技術による効率化、安全性の向上を目的としてイクシス(神奈川県川崎市)と共同開発し、実証実験が終了したため自社およびプラント・工場設備保全会社向けに本格運用する。

 22年12月には、一般的にガスタンクと呼ばれる球形のガスホルダーおよびこれと用途が類する円筒形タンク等の解体に関して、三谷産業<8285>と業務提携した。同社の解体技術と三谷産業のショットブラスト(表面塗装剥離)技術を融合し、除去が困難なPCB含有塗膜を安全に除去する技術を確立する。

 また22年12月には同社が保有している、陸上風力発電設備の転倒に用いる「発電用風車設備解体に関する特許技術」(転倒工法)に関して、長崎県松浦市において転倒を実施したと発表している。転倒方向を確実に制御できるため安全性が高く、大型クレーンの回送や組み立てなどで生じる費用も削減できる工法である。

■新中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」

 受注環境は良好である。第5次エネルギー基本計画や、脱炭素化に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想され、同社試算の市場規模は電力関連が約13兆円、製鉄関連が約2兆円、石油・石油化学関連が約8兆円、その他製造業が約20兆円+αとしている。

 22年12月に公表した新中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」では基本方針に「脱炭素経営と企業風土の変革による収益力向上」を掲げた。そして数値目標は26年1月期売上高120億円(脱炭素解体ソリューション90億円、DXプラントソリューション30億円)、営業利益12億円、当期純利益8億80百万円、1株当たり純利益(EPS)99円、ROE(自己資本利益率)13%、工事監督員数92人(22年1月期実績44人)とした。従来の「中期経営計画2025」の26年1月期目標値に対して、売上高を20億円、営業利益を2億円、当期純利益を1億28百万円、それぞれ上方修正した。

 重点戦略として、工法によるイノベーションとしての脱炭素解体ソリューション、IT活用によるイノベーションとしてのDXプラントソリューション、さらなるイノベーションを産み出す土台としての人事戦略を掲げている。脱炭素経営を通じて企業価値・ブランド向上を実現するため、脱炭素解体に資する工法開発(リンゴ皮むき工法や風車転倒解体に続く脱炭素解体工法の開発)、解体工事のリユース・リサイクル率向上(脱炭素解体の要素技術確立とトレーサビリティ確保による付加価値創出)、脱炭素経営に紐づいた新規ビジネス創出(プラント解体工事から派生する工事以外のビジネス創出)を推進する。

 投資計画としては3年総額35億円の積極投資を実行する。内訳は、脱炭素解体ソリューションで13億円(工法開発、実証実験、M&A)、DXプラントソリューション16億50百万円(AUSE、天井クレーンロボ、遠隔・無人化施工、ロボット・システム開発、M&A)、人事戦略5億50百万円(採用・紹介、教育、M&A)としている。株主還元については配当性向40%を目安として安定的な配当を実施する。

 21年12月には指名・報酬委員会の設置、株主総会の議決権行使の電子化および機関投資家向け議決権電子行使プラットフォームへの参加、サステナビリティ基本方針制定およびサステナビリティ委員会設置を発表した。コーポレート・ガバナンス体制の一層の充実・強化を図り、SDGsへの取り組みを強化する。

■23年1月期は一時的要因で赤字予想だが24年1月期収益拡大期待

 23年1月期連結業績(22年12月8日付で下方修正、23年3月8日付で上方修正)は、売上高が22年1月期比8.5%減の54億58百万円、営業利益が2億15百万円の赤字(22年1月期は4億88百万円の黒字)、経常利益が94百万円の赤字(同7億21百万円の黒字)、親会社株主帰属当期純利益が64百万円の赤字(同13億91百万円の黒字)だった。配当は22年1月期比4円増配の20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。

 前期比では、受注・着工を予定していた大型解体工事の計画延長、一部低利益率工事の影響、役員退職慰労金引当の計上などで減収・赤字だった。ただし前回予想比では、工事の順調な進捗や一部工事の追加受注などが寄与して前回予想を上回って着地した。売上総利益は34.4%減少、販管費は27.3%増加した。販管費では役員退職慰労金引当繰入額1億84百万円を計上した。特別利益では前期計上した企業結合における交換利益12億75百万円が剥落した。

 プラント解体事業の完成工事高は8.6%減の52億42百万円、業界別構成比は電力が14%、製鉄が27%、石油・石化が27%、環境が15%、ガスが5%、3Dが2%、その他が10%(22年1月期は電力が21%、製鉄が17%、石油・石化が35%、環境が21%、ガスが2%、3Dが2%、その他が3%)だった。環境関連の工事需要の高まりや矢澤のグループ化で環境分野の構成比が上昇している。完成工事高のうち元請工事は13億14百万円で元請比率は25.1%(同19億68百万円で34.3%)だった。

 受注高は46.3%増の70億円、23年1月期末時点の受注残高は33億52百万円となった。受注残高の業界別構成比は電力9%、製鉄10%、石油・石化74%、環境5%、ガス1%、その他1%となっている。受注残高ベースでは大型案件の影響で石油・石化の構成比が高くなっている。

 なお、その他の兼業事業売上高は6.0%減の2億16百万円だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が16億81百万円で営業利益が2億18百万円、第2四半期は売上高が8億52百万円で営業利益が1億43百万円の赤字、第3四半期は売上高が13億33百万円で営業利益が68百万円の赤字、第4四半期は売上高が15億95百万円で営業利益が2億22百万円の赤字だった。なお完成工事高は、顧客(施主)の設備投資計画に応じた季節性があり、下期(8月~1月)に増加する傾向がある。

 24年1月期連結業績予想は売上高が23年1月期比42.9%増の78億円、営業利益が5億10百万円の黒字(23年1月期2億15百万円の赤字)、経常利益が5億86百万円の黒字(同94百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が4億円の黒字(同64百万円の赤字)としている。配当予想は23年1月期と同額の20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。

 堅調な受注見込案件の状況を踏まえて大幅増収・黒字予想としている。老朽化プラント解体工事の増加などで中期的に事業環境は良好であり、収益拡大を期待したい。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。

 中期経営計画で掲げた重点施策の着実な遂行によって業績目標の達成に取り組むとともに、プラント解体業界のリーディングカンパニーとしての社会的サステナビリティへの貢献と利益成長の両立、リスク管理体制の強化やコンプライアンスの徹底などコーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組むことで、更なる企業価値の向上(時価総額の向上)を図る。流通株式数については第三者割当による第9回および第10回新株予約権(行使価額修正条項付)の行使により、流通株式数の増加を見込んでいる。これらの取り組みによって26年1月期までにプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。

 そして22年4月には、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画に基づく進捗状況を開示した。流通株式数については22年1月31日時点で5万2101単位となり、21年6月30日時点の4万6109単位に対して5992単位増加した。

 業績面では、中期経営計画初年度の22年1月期は売上高が59億66百万円、営業利益が6億07百万円、経常利益が8億40百万円、親会社株主帰属当期純利益が14億67百万円となった。営業外収益と特別利益における一過性利益計上も寄与して、計画(売上高56億円、営業利益4億50百万円、経常利益5億18百万円、親会社株主帰属当期純利益3億60百万円)を達成した。一過性利益を除くベースでも経常利益6億39百万円、親会社株主帰属当期純利益4億15百万円となり、計画を達成した。

 23年1月期は赤字だったが、受注・着工を予定していた大型解体工事の計画延長など一時的要因が主因であり、これを除けば各種施策が着実に実施されていると評価できるだろう。

■株主優待制度は毎年1月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年1月31日現在1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じてクオカードを贈呈する。なお22年6月に制度の拡充(詳細は会社HP参照)を発表した。5単元(500株)以上保有株主を対象とするベステラ・プレミアム優待倶楽部を新設し、保有株式数に応じて商品に交換可能な優待ポイントを贈呈する。23年1月31日対象分から実施した。またベステラ・プレミアム優待倶楽部を通じて株主管理のDX化も促進する。

■株価は反発の動き

 株価は地合い悪化の影響で22年10月の昨年来安値に接近する場面があったが、目先的な売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。3月15日の終値は879円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS45円14銭で算出)は約19倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS493円05銭で算出)は約1.8倍、そして時価総額は約79億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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